【No.042】究極のダイバーズ・クロノグラフ

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今日はジンのダイバーズ・クロノグラフ、モデル206シリーズのお話しです。
まずは生産終了となった以前のモデル203からご紹介します。

 

 

【1995年】
model 203.TI.ARより
Arドライテクノロジーを導入

1995年、ジンは精度安定に寄与する画期的な技術、Arドライテクノロジーを導入。これを搭載したダイバーズ・クロノグラフのモデル203.TI.ARを発表しています。

機械式時計の心臓部といえば高速で振動するテンプです。激しく擦れ合うテンプ軸と軸受。その摩擦を和らげているのが潤滑オイルです。ところが、水分を吸収して潤滑オイルが劣化すると、放電腐食の原因となる静電気が発生しやすくなります。放電腐食した潤滑オイルは、テンプの振動を不安定なものにし、刻時精度を著しく悪化してしまうのです。

これに対抗すべく開発されたのが、3つの技術で構成されるArドライテクノロジーです。硫酸銅を充填したカプセルにより、ケース内部の湿気を吸収するドライカプセル。従来型のパッキンに比べ、ケース内部への水分浸透を最大25%も抑えるEDRパッキン。そして、腐食の原因となる不安定なガスの侵入を防ぐプロテクトガスの充填です。

これら先進的な技術により、ケース内部から効率良く水分を排除。乾燥状態が保たれることで、精度悪化に繋がる潤滑オイルの劣化を防ぐのです。

model 203.TI.AR

自社開発の新技術「Arドライテクノロジー」を搭載したダイバーズ・クロノグラフ。水分由来による精度悪化が劇的に改善されました。ETA Cal.7750 自動巻クロノグラフ。ピュアチタンケース&ブレスレット。ケース径41mm。ケース厚さ16mm。重量68g(ベルト除く)。30気圧防水。

 

ドライカプセルはケースの7時と8時の間に外側からねじ込み式で挿入され、ケース内の一端には水分を通し放出することのないフィルターがつけられ、約4mgも水分を吸収できす。インジケーター付きで、吸水量が増すと色が薄青から濃紺に変わります。ドライカプセルはチタン製で、ケース外側の一端にはサファイアガラスがはめ込まれています。裏蓋やサファイアガラスのOリングはアルゴン元素が抜けにくい特殊素材のEDRパッキンを採用しています。Arドライテクノロジーを採用している証しとして、Arのロゴマークが入っています。

 

1995年以前に発売されていた
ダイバーズ・クロノグラフ 203.STは
パイロット・クロノグラフ 103.B.SA.AUTOから派生

 

 

 

model 203.ST

1995年以前にモデル203.STは発売されており、パイロット用のモデル103.B.SA.AUTOから派生したダイバーズ・クロノグラフで、時計ケースは流用されています。そのためモデル203.STでありながら、当時の裏蓋のシリアルナンバーは103.●●●●から始まっていました。ドライカプセルやアルゴンガスといったArドライテクノロジーは搭載されていません。ETA Cal.7750 自動巻クロノグラフ。ケースや裏蓋はステンレススチール製。シャークスキンストラップ。サファイアクリスタル製風防。逆回転防止ベゼル。ケース径41mm。ケース厚さ16mm。重量90g(ベルト除く)。30気圧防水。

 

 

model 103.B.SA.AUTO

ダイバーズ・クロノグラフのモデル203シリーズのベースになったモデル103。ETA Cal.7750 自動巻クロノグラフ。ステンレススチールケース。カウレザーストラップ。サファイアクリスタル製風防。サファイアクリスタル製ねじ込み式バック。両方向回転パイロットベゼル。ケース径41mm。ケース厚さ17mm。重量88g(ベルト除く)。20気圧防水。

 

 

【1999年】
モデル203.ARKTISを装着し極限潜水

自動巻きムーブメントに使用する場合は、-45℃~+80℃の温度範囲でDIN(ドイツ工業規格)が定める刻時精度を保証する「ジン特殊オイル66-228」。これを搭載したタイムピースがどれほどの実力を発揮するのでしょうか? 1999年の6月、検証を目的としたひとつのアドベンチャーが実施されました。

検証に選ばれた場所は、北緯81度1分47秒。ノルウェー最北端に位置するシュピツェンベルクの北極海です。ここで極限潜水のエキスパートとして知られたマリオ・M・ヴァイトナー氏の手を借りて、極限潜水装備のテストが行われたのです。

潜水深度は64.5m。ヴァイトナー氏の腕には「ジン特殊オイル66-228」を搭載したモデル203.アークティスのプロトタイプが装着されていました。テストには4個のプロトタイプが使用され、ヴァイトナー氏が潜水するたびに刻時精度が測定されたのです。

極限的なテストは数日に及びました。その間、彼は繰り返し冷たい海に潜って行きました。とりわけ過酷だったのが、-1.6℃の海中から上がるやいなや、すぐさま-25℃という極寒の環境にさらされたときだったのです。それでも、モデル203.アークティスのプロトタイプは、北極海の環境に耐え抜きDIN規定の刻時精度規定に合格したのです。

model 203.ARKTIS

曲面サファイアガラスと文字盤に施したブルーの誘電塗装により水中での高い視認性を確保しています。また、ブルーのシャクスキン・ストップが印象的なダイバーズ・ウオッチです。ETA Cal.7750 自動巻クロノグラフ。ジン特殊オイル66-228。Arドライテクノロジー。逆回転防止ベゼル。SSケース。シャークスキンストラップ。ケース径41mm。ケース厚さ16mm。重量90g(ベルト除く)。30気圧防水。

ねじこみ式リューズとプッシュボタン、ねじ込み式裏蓋を使用しDIN(ドイツ工業規格)で規定された時計の防水性に関する規格(DIN8310)および潜水用の安全基準規格(DIN8306)の規定において、30気圧の防水性を持っています。

 

 

 

ジン社開発のムーブメント用特殊オイル「ジン特殊オイル66-228」を採用し、-45℃~+80℃の過酷な温度範囲での刻時精度維持を可能にしました。

 

極寒の北極海でモデル203.ARKTISを装着して極限潜水に挑んだマリオ・M・ヴァイトナー氏。極限潜水のエキスパートとしてその業界では知られた人物です。

 

 

【2019年】
model 203から20年の時を経て
model 206 水中でのクロノグラフ操作が可能に

モデル206シリーズは、1995年にArドライテクノロジーを初めて搭載したタイバーズ・クロノグラフのモデル203.TI.ARや、1999年に開発されたジン特殊オイル66-228を採用したモデル203.ARKTISをスペックアップした206.ARKTIS.Ⅱとして2019年に発売されました。

モデル203シリーズの直径が41mmに対して、モデル206シリーズは43mmに変更されています。また当時は開発されていなかったジン社独自の特殊結合方法により取り付けられた逆回転防止ベゼルは衝撃でも決して外れることはありません。

一番の特徴は、水中でのクロノグラフ操作が可能ということです。モデル203シリーズのデザインと同様、クロノグラフのプッシュボタンはねじ込み式の外観になっていますが、実はデザインのみを踏襲しており、非ねじ込み式でクロノグラフに簡単にアクセスできます。非ねじ込み式でありながら、ジン独自のD3システムの技術によりプッシュボタンを二重のパッキンで時計ケースに隙間なく取り付けているため、高い密封性が得られ、水中でのクロノグラフ操作が可能となりました。

さらに、世界最大級の船級・認証機関DNV GL (旧ゲルマニア・ロイド船級協会) において、欧州潜水器具規格EN250/EN14143に基づきテスト・認定を受けています。これらの点も当時はなかった特徴です。

 

model 206.ARKTIS.Ⅱ

 

 

ETA Cal.7750 (自動巻/25石/28,800振動/パワーリザーブ48時間)。クロノグラフ (30分積算計、12時間積算計) 水中操作可能 (D3システム)。ジン特殊オイル66-228 (-45℃から+80℃での精度保証)。Arドライテクノロジー搭載。サンレイ仕上げブルーダイヤル。SSケース。両面無反射サファイアクリスタル風防。サファイアクリスタル製ねじ込み式バック。特殊結合の逆回転防止ベゼル。ケース径43mm。ケース厚さ17mm。負圧耐性。300m防水。

ローターには-45℃の気温での作動が可能な証として、雪のマークと「-45℃」という文字が刻まれています。

 

 

model 206.ST.AR

 

 

ETA Cal.7750 (自動巻/25石/28,800振動/パワーリザーブ48時間)。クロノグラフ (30分積算計、12時間積算計) 水中操作可能(D3システム)。Arドライテクノロジー搭載。SSケース。両面無反射サファイアクリスタル風防。サファイアクリスタル製ねじ込み式バック。特殊結合の逆回転防止ベゼル。ケース径43mm。ケース厚さ17mm。負圧耐性。300m防水。※ジン特殊オイル66-228 (-45℃から+80℃での精度保証) は採用されていません。

 

 

※左は現行モデル。右は生産終了モデル。

 

1999年にジンが発表したモデル203.ARKTISから20年の時を経て、2019年に発表されたモデル206.ARKTIS.II。サンレイ仕上げを施したブルーの文字盤や、基本デザインはそのままにサイズは直径41mmから43mmへ変更されましたが、-45℃~+80℃の温度範囲での時計の機能的信頼性が保証されるジン特殊オイル66-228と、Arドライテクノロジーは同様に搭載されています。

革新的な変化はジンのD3システムを採用することで、水中でクロノグラフのプッシュボタン操作が可能になりました。これまでは誤って水中でプッシュボタンを押してしまった瞬間に時計ケース内部に水が侵入して故障してしまいましたが、そのような心配は今後は考える必要はありません。

モデル206.ARKTIS.IIは時計でありながらも、潜水に必要不可欠な計測機器です。
ジンのダイバーズ・ウオッチの中でもオススメの逸品です。

 

上記でご紹介したモデル206シリーズは、メールオーダーも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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どうぞ宜しくお願い致します。

 

写真/Sinn Spezialuhren GmbH、WPPアーカイブス、Sinn 世界計測機器(ワールド・ムック1174)より。

 

2020年6月6日/小出

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