【No.019】大空の向こうに
皆さん、こんにちは。ジン・デポ 渋谷の小出です。
今日は1979年に発売され、今なお人気の高いナビゲーション・クロノグラフ「モデル903」のお話です。
1970年代にスイス時計業界を襲った日本製のクォーツ・ムーブメント、いわゆる「クォーツ・ショック」の影響により、1979年に倒産に追い込まれたブライトリング社からナビタイマーのデザイン版権とムーブメント等の供給ラインを受け継いだジン社は「モデル903」として販売を開始しました。
model 903
参考商品
1979年に作られたモデルで、パイロットに必要な機能を全て盛り込んだプロフェッショナル・ナビゲーション・クロノグラフです。複雑な機能を集積したETA社製のCal.7740を搭載していました。発売当初はムーブメントにブライトリングの刻印が入っています。文字盤以外にもムーブメント供給ラインの権利も譲り受けたので、当然の流れなのでしょう。
model 903.ST.GL.24
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レマニア製の24時間表示のCal.1877(17石、毎時2万1600振動、パワーリザーブ約48時間)を搭載した手巻きで、1980年代に製造されました。ケースは直径41㎜、厚さ13㎜でミネラルガラスの風防と裏蓋を備えています。リュウズは現行モデルと異なりねじ込み式ではないため、3気圧防水となっています。
model 903.ST.GL
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1980年代製。直径41.0㎜、厚さ13㎜のSSケースにレマニア製の手巻きクロノグラフのCal.1873(17石、毎時2万1600振動、パワーリザーブ約48時間)を搭載しています。3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドを備えています。3気圧防水。
model 903.PL.GL.24
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1980年代に少量が製造されたゴールド・プレート・ケースの24時間表示モデルで、ケースの素材以外はモデル903.ST.GL.24と同様の仕様となっています。蛍光塗料には現行のスーパールミノバではなく、トリチウムが使われ、SWISS MADE の文字の両脇にTが記されています。
model 903.PL.GL
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上のモデルと同じく1980年代に作られたゴールド・プレート製ケースを使った12時間表示バージョンです。レマニア製の手巻きクロノグラフのCal.1873(17石、毎時2万1600振動、パワーリザーブ約48時間)を搭載しています。
model 903.ST.AUTO.B
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2004年発売。基本デザインと機能は現行と変わりませんが、すでに生産が中止されたブラック1色の文字盤のモデルです。なお回転計算尺を備えた文字盤はブライトリングの“ナビタイマー”と同様ですが、これは1979年にブライトリングがクォーツ・ショックの影響で経営を清算した際に、ジンが同社からこの文字盤デザインの権利を譲り受け、903を製作したという背景にあります。ETA製自動巻きクロノグラフのCal.7750(25石、毎時2万8800振動、パワーリザーブ約48時間)を搭載しています。
model 903.ST.AUTO.S
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2004年発売。直径41.0㎜、厚さ14.5㎜のSSケースにETA製自動巻きクロノグラフのCal.7750(25石、毎時2万8800振動、パワーリザーブ約48時間)を搭載しています。3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンド、4時30分位置に日付表示を備えています。風防と裏蓋はサファイアクリスタル製です。10気圧防水。
僕のお気に入りの逸品!
2006年発売!幻の手巻き式ムーブメント
レマニア1872 & レマニア1883搭載
時計コレクターにとって機械式といえばまず手巻きが頭に浮かぶのではないでしょうか。ローターがなく、裏蓋を開ければムーブメントがじかに見られます。毎日規則正しく決まった時間にリュウズを巻くことはひとつの儀式なのです。これがモノとその所有者の正しい関係ともいえます。それは自動巻きでは得られない親しみですし、電池で動くものに比べれば遥かに親密といえる関係なのです。
2006年、伝統的な手巻きの良さをこのように理解するユーザーすべてに対して、ジン社ではモデル903.H2と903.H4を開発しました。希少品のレマニアの手巻き式ムーブメントを使用し、防水・耐圧は10気圧(水深100m)で、風防・裏蓋は反射防止加工のサファイア・クリスタルで仕上げられています。
モデル903.H2は、時間と空間の中で正しく位置を知るために必要なものはすべて備えており、時間表示は視認性がよく、その他の機能も把握しやすく、903のレギュラーモデルと同じく、すべて数字は金線細工で表示されており、その他のディテールも各々の役割を忠実に果たしています。
ムーブメントは手巻き式のレマニア1872を搭載し、積算分計とスモールセコンドは3時と9時の位置にあり、不活性長時間残光性塗料のスーパールミノバによって文字盤の数字はすべて背景から際立っています。さらに文字盤はとっておきのアンスラサイト(無煙炭)の梨地加工、スモールダイアルはポリッシュ・ブラックになっており、そのコントラストはまさに特別仕様といえます。
第2のリュウズによって内部のベゼルがスムーズに回転し、これによって計算尺機構が各種の演算を可能にします。ジン社のナビゲーション・クロノグラフをよく知っているユーザーは、この点で大きい外見上の違いに気づくはずです。903のレギュラーモデルとは異なり、第2リュウズを8時の位置においているのです。
モデル903.H4はH2に加えてコンプリケーション機構を持っています。手巻き式のレマニア1883のムーブメントを使って、スモールセコンドは9時位置に、30分積算計は3時位置に、12時間積算計は6時位置にあり、さらに12時位置には日付針とムーンフェイズを備えているのです。このように4つのスモール・ダイアルを持つことで、文字盤のバランスは最高に良く視認性も抜群です。したがってこのモデルはジン社のナビゲーション・クロノグラフの中では最も複雑なタイプになり、コレクターにとっては欠かせぬ逸品だったのです。
model 903.H2
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2006年に220個の限定で発売されたスペシャル・バージョンです。レマニア製の手巻きクロノグラフ、Cal.1872(17石、毎時2万1600振動、パワーリザーブ約48時間)を搭載し、レギュラー・モデルと異なり30分積算計とスモールセコンドの2つ目が特徴です。直径41.0㎜、厚さ12.6㎜のSS製ケースとブレスレットの仕様で、アンスラサイトカラーの文字盤を備えています。風防と裏蓋はサファイアクリスタル製。
model 903.H4
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すでに生産が終了されたムーブメントを採用した希少な時計で、2006年に作られました。12時位置にムーンフェイズと日付表示を備えたレマニア製の手巻きのCal.1883(17石、毎時2万1600振動、パワーリザーブ約40時間)を直径41.0㎜、厚さ13.2㎜のSSケースに搭載しています。赤のクロノグラフ秒針やサブダイアルの針がアンスラサイトカラーの文字盤上で際立ち、読み取りやすいデザインとなっています。
モデル903発売30周年記念 世界限定300本
model 903.Klassik
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1979年のモデル903の発売30周年を記念して、2009年のバーゼルワールドで限定300個で発表されました。レマニア製の手巻き式 Cal.1883(17石、毎時2万1600振動、パワーリザーブ約40時間)をSS製ケースに搭載しています。ブラックをベースに白のサブダイアルとインナーベゼルを備えた文字盤は視認性に優れています。
いまご購入できるモデルはコチラ!
model 903.ST.AUTO
税別価格 ¥530,000
※型押しカウレザー仕様は税別価格 ¥470,000
ブラックプレート仕上げの文字盤を備える現行品で、セリタ製の自動巻きクロノグラフのCal.SW500(26石、毎時2万8800振動、パワーリザーブ約48時間)を搭載しています。ケースは直径41.0㎜、厚さ14.5㎜のSS製で、風防と裏蓋はサファイアクリスタルを採用しています。10気圧防水。
model 903.ST.AUTO.B.E
税別価格 ¥470,000
ブレスレット仕様は税別価格 ¥530,000
現行モデルのバリエーションで、ダークブルーの文字盤に白のインナーベゼルを組み合わせています。インデックスと針にはアイボリーカラーのスーパールミノバを塗布して、視認性が高められています。
ナビゲーション・クロノグラフ「モデル903」にはユニークな歴史がありますね。
皆さんもジンが想った大空の向こうに何が見えましたか?
写真/Sinn Spezialuhren GmbH、Sinn 世界計測機器(ワールド・ムック1174)より。
2020年3月2日/小出