【No.194】対テロ特殊部隊 GSG9 制式採用
皆さん、こんにちは。ジン・デポ 渋谷の小出です。
いつもブログをお読み頂き誠にありがとうございます。
今日は、ドイツ連邦警察の対テロ特殊部隊であるGSG9に制式採用されているUX.GSG9(EZM 2B)をご紹介します。
1977年10月18日、モガディシュでハイジャックされたルフトハンザ航空181便「ランツフート号」を救出したことで、ドイツの対テロ特殊部隊GSG9(Grenzschutzgruppe 9)は世界的に有名になりました。ドイツの連邦警察の対テロ特殊部隊の名声と同様に伝説となっているのが、隊員が任務中に着用していたダイバーズウォッチのEZM2なのです。
ジン社は1990年代半ばに、GSG9と共同でミッションタイマーのEZM2を開発しました。この時計は、隊員が求める特殊な機能要件を忠実に満たしていたのです。EZM2はすでに生産終了となっていますが、誰もが購入できる後継モデルがあります。それがUX.GSG9(EZM 2B)です。
403.EZM2.3H
1997年 初代モデル(参考品)
1997年にGSG9用に開発されたEZM2の初代モデルです。ケース内部にシリコンオイルを充填するハイドロ・テクノロジーによって、5000mという高い防水性を持っています。またオイルと風防のサファイアクリスタルの屈折率がほぼ同じであることから、風防がないように見え、さらに文字盤表面はオイルによって光の乱反射がない。このため非常にクリアに時刻を読み取ることが可能となったのです。
針やインデックスにはトリチウムが塗布され、文字盤にはそれを示す3Hの記号が入れられています。秒針や日付、文字盤に記されたロゴやマークはダークレッドに統一されました。この色は水中では見えないため、ダイバーは潜水中は時分針とインデックスのみを確認できるのです。逆回転防止ベゼルを備えた直径41.0mm、厚さ11.4mmのSSケースにETA製クォーツのCal.955.612を搭載しています。
※本来はブラックのシャークスキンストラップですが、撮影の都合上、カウレザーストラップに変更しています。
403.EZM2
1999年 第2世代モデル(参考品)
1999年に発表された第2世代モデルです。3Hのマークはなくなり、蛍光塗料がトリチウムからスーパールミノバに変更されています。3Hとはhydrogen-3の略で、放射性物質である三重水素、いわゆるトリチウムです。時計業界全体でも1990年代後半には、ほぼ全てのブランドがスーパールミノバへ変更しています。その他のスペックは初代モデルと同様です。
403.EZM2.GSG9
2004年 第3世代モデル(参考品)
2004年に登場した第3世代モデルで、6時位置にGSG9のロゴマークが記され、MADE IN GERMANYの文字が入れられました。逆回転防止ベゼルの仕様が変わり、ステンレススチールに分目盛りを記したアルミニウム製のリングが取り付けられました。ベルトもシリコンストラップに変更されました。このモデルは日本で2005年に放映されたテレビ・ドラマの『海猿』で採用されたことから人気を博しました。
UX.GSG9(EZM 2B)
2007年
〈ここが凄い!その1〉ドイツの潜水艦Uボートスチール
ジン社独自の時計素材であるドイツ最新鋭潜水艦の鋼鉄Uボート・スチールを時計ケースに使用しています。通常、時計ケースには、316Lや904Lといったステンレス・スチールが使用されていますが、Uボート・スチールはさらにハイグレードです。海水耐性・耐腐食性が優れているだけでなく、残留磁気を帯びずに反磁気性があります。
〈ここが凄い!その2〉逆リュウズ
リュウズは通常と逆の左側に付います。銃火器が引っかからないよう安全性を重視した配慮がされており、特殊部隊にとって事故につながる要素を事前に排除することに役立っています。
〈ここが凄い!その3〉5000m防水なのに時計ケースの厚さは僅か13.3mm
ケースサイズは直径が44.0mm、厚さは僅かに13.3mmですが、耐圧・防水性能は脅威の500気圧(5000m)です。負圧耐性も兼ね備えています。ムーブメントはETA製の年差クォーツCal.955.652を搭載しています。ロングライフバッテリーで約7年駆動します。船級・認証機関DNV GL(旧ゲルマニア・ロイド)の検定済みです。
〈ここが凄い!その4〉特殊構造の裏蓋
裏蓋は特殊構造で中央に円盤がはめ込まれています。急激な温度変化が起きるとケース内部の圧力が増減します。また圧力の変化で時計ケース内にある非常に細かい気泡が膨張することがあります。そこで内圧の変化や気泡の発生を抑えるために、円盤がわずかに浮き上がる構造が考案されたのです。
〈ここが凄い!その5〉決して外れない回転ベゼル
ジン独自のテクノロジーである特殊結合方式の逆回転防止ベゼルは、岩などにぶつけても決して外れる事はなく、さらにテギメント加工が施され、セラミック以上の1500ビッカースの硬度がありますので、ドライバー等で引っかいたぐらいでは傷はつきません。
〈ここが凄い!その6〉ダークレッドの文字
秒針や文字盤に記された文字はや部隊ロゴはダークレッドに統一されており、この色は水中では見えないため、ダイバーは潜水中は時分針とインデックスのみを確認できます。航空時計作りで培われた優れた視認性と機能性そして信頼性が、そのまま受け継がれているのです。
〈ここが凄い!その7〉パスカルの原理
ハイドロ・テクノロジーとは、時計ケース内部全体に特殊なオイルを充填・封入することにより、海水や淡水の外圧に対してまったく同じだけの内圧で押し返すというパスカルの原理の応用です。空気の入った風船を水中に沈めると水圧で風船は小さくなりますが、水の入った風船はどこまで沈めても大きさは変わりません。したがって理論上は無限の防水性能ですが、クオーツ・ムーブメントの安全を考慮して5000m防水となっています。時計ケース自体は12,000mの耐圧です。
〈ここが凄い!その8〉反射しないサファイアガラス
ハイドロ・テクノロジーには、文字盤の視野角度が飛躍的に向上するという、もうひとつの特徴があります。サファイアガラスとほぼ同等の屈折率を持つこの特殊オイルの効果により、光の反射で視認性が落ちるのを避け、水中であらゆる角度から完璧な視認性を得ることができます。ダイバーズウォッチとして、まさに革新的な技術です。
1997年に403.EZM2.GSG9が制式採用となりました。それから10年が過ぎた2007年に後継機として開発されたのが、UX.GSG9(EZM 2B)です。
–20 °C から +60 °Cの過酷な環境下でも正確に時を刻み、みずからの発想や技術を存分に採用したこのハイスペック仕様は、まさに生死を左右する対テロ特殊部隊GSG9にこそ相応しいモデルです。
UX.GSG9(EZM 2B)
※このページからは全画面表示で視聴することができません。全画面表示で視聴なさりたい方は、直接Sinn DEPOT OnlineのYouTubeのサイトからご覧ください。
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ハイドロ・テクノロジー
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Photo/Sinn Spezialuhren GmbH, Sinn DEPOT Shibuya
2021年10月27日/小出