第2話 思い出

「あなた、今日は早いの?」

「あぁいつも通りかな」

「夜ごはん何がいい?」

「肉より魚かな」

若い時は肉が食べたくないなんて

思ったこともなかったが、

加齢には抗えない。

「そんなことより時計屋にいないわよね」

ドキッとして急いで電話を切った。

まったく勘の鋭い妻だ。

店員に悪いと思いながら又来ますと

告げて帰宅を急いだ。

ふと時計を見る。

新婚旅行でドイツに行ったときに、

妻とおそろいで購入したものだ。

時計が好きな妻がSinnが欲しいから

新婚旅行はドイツが良いと。

その時はまだ自分がこんなに

沼にはまってしまうとは思ってもいなかった。

 

続く