【No.131】Arドライテクノロジー

皆さん、こんにちは。ジン・デポ 渋谷の小出です。
いつもブログをお読み頂き誠にありがとうございます。

今日は、時計を湿気から守る除湿機構「Arドライテクノロジー」をご紹介します。
1995年に開発されたモデル203.TI.Arより導入されています。

 

Arドライテクノロジー

 

 

時計を湿気から守る除湿機構

Arドライテクノロジーは、機械式時計の基本的な問題である、時計内部に含まれる、あるいは拡散する空気中の水分によるオイルの劣化を解決する技術です。ドライカプセル、EDRパッキン、プロテクトガスの充填という3つのArドライテクノロジーの要素により、ムーブメントはほぼ無水状態で搭載されています。オイルの劣化や急激な寒さによるサファイアガラスの曇りを防ぎ、確実な機能と精度を実現しています。

 

なぜ除湿技術が必要なのでしょうか?

時計は個々の部品がどれほど正確に作られていても、耐久性を維持するためには摩擦や摩耗を最小限に抑えなければなりません。そのために、高品質の潤滑オイルを使用して、ムーブメントの歯車に供給しています。しかし水分は潤滑オイルの劣化を加速させます。

水分はどのようにして時計の中に入るのでしょうか? 水分は、大気中に常に気体として存在しているため、時計ケースのパッキンから何年もかけて徐々に侵入することができます。温度変化により微小な結露が発生し、ムーブメントの露出した部分に水分が液体の形で溜まります。その結果、潤滑の効率が悪くなります。電解腐食、摩耗、摩擦が増加し、テンプの振幅が減少します。時計の精度が低下し、最終的には修理しなければならなくなります。このような問題を解決するために、ジンの技術者は「Arドライテクノロジー」を開発しました。

ムーブメントをほぼ完全に乾燥した無水の環境に保つことを目的としています。これにより、潤滑オイルの劣化を遅らせ、ムーブメントの寿命を延ばすことができるのです。また、急激な温度変化(冷水に浸すなど)によるサファイアガラスの曇りを防ぐことができ、時計の視認性を常に保つことができます。

 

 

3つの技術要素

Arドライテクノロジーは、ドライカプセル、EDRパッキン、プロテクトガスという3つの技術要素に基づいています。

 

(1)ドライカプセル

ドライカプセルは、Arドライテクノロジーの最も重要な部分です。カプセルの中には特殊な除湿剤が入っており、時計ケース内部の空気中の水分を吸収して永久的に結合させる仕組みになっています。特殊な除湿剤は含水率が高くなると青色に変化し、ドライカプセルの飽和度を示す指標となっています。このため、チタン製のドライカプセルにはサファイアクリスタルの小窓がついています。

ドライカプセルに吸収された水分量が増すにつれて、淡いライトブルーからネイビーブルーへと色が変化します。

ドライカプセルのカラースケール。飽和度最大25%の淡いライトブルーから(左)、特殊乾燥剤の色が最も濃くなる飽和状態まで(右)、カプセルが湿気と結合します。

 

 

 

(2)EDRパッキン

Arドライテクノロジーを搭載した時計には、空気中の水分の時計ケース内への侵入を最小限に抑えるために、EDR(Extreme Diffusion-Reducing)パッキンのみを使用しています。このパッキンは、時計ケース内への水分の侵入を、従来の二トリルゴム(NBR)を使用したケース用パッキンでの許容値と比べ水分浸透を最大で25%削減することができます。

左が二トリルゴム パッキンです。右のグリーンがEDRパッキンです。

 

 

 

(3)プロテクトガス

Arドライテクノロジーは、希ガス(不活性ガス)と呼ばれる極めて安定したプロテクトガスの充填によって完成します。これにより、Arドライテクノロジーが機能するための理想的な環境が整います。従来の時計の組立時に時計ケース内に入ってしまっていた空気中の水分を除去することができます。時計ケース内を真空状態にしてプロテクトガスを充填します。

 

開発当初はアルゴンガスを充填していましたが、現在はアップデートされ別の安定した不活性ガスであるプロテクトガスが充填されています。文字盤のArのマークは当時のアルゴン(Argon)の名残であり、プロテクトガス封入の証です。

 

 

オススメのArドライテクノロジー搭載モデル

▶️ EZM13

 

▶️ 206.ARKTIS.II

 

 

時計ケース内の環境は大気中の環境と同じになろうとして、何年もかけて徐々に徐々に時計ケース内に水分を含んだ空気が侵入してきて、プロテクトガスと入れ替わろうとします。しかしご安心ください。ドライカプセルがその水分を吸収してくれますので、時計ケース内は乾燥した無水の状態が続き、オイルの劣化を防いでいます。

あなたもArドライテクノロジーを体験してみませんか?

 

 

 

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2021年6月14日/小出

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